建築士が教える!住宅選びで絶対外せない防災ポイント7選【資産を守る家の条件】

はじめに

「家を買う=人生で最も高い買い物」。だからこそ、立地や間取りだけでなく”防災力”にも目を向けたいものです。

建築士として住宅に関わる中で、地震や台風、浸水などの被害に遭ったご家族を目の当たりにしてきました。防災性の高い住宅を選ぶことは、家族の命を守るだけでなく、資産を守る行動でもあります。

この記事では、家を選ぶ前に知っておきたい「防災チェックポイント」をわかりやすく紹介していきます。将来の安心と資産価値を見据えた住宅選びのお役に立てれば幸いです。

そもそも”防災性が高い住宅”ってどういうこと?

防災=災害に強く、被害が小さく済む家

  • 地震・火災・台風・水害への備えが整っている
  • 災害発生時に修繕や建替えにならないための”初期防御力”がある
  • 災害後も住み続けられる耐久性と回復力を持っている
  • 家族の安全を確保する避難計画が立てやすい構造になっている

地域別の主な災害リスク:

  • 太平洋側沿岸部:地震・津波・台風
  • 内陸部・山間部:地震・土砂災害・豪雪
  • 大都市圏:地震・水害・火災延焼
  • 河川流域:水害・浸水 地域の特性に合わせた防災対策が重要です。

「災害=資産価値の低下」にもつながる

  • 自然災害による被害は、修繕費用というコスト増につながる
  • 被災した住宅は、その後の売却時に価値が下がるリスクがある
  • 住宅ローン返済中に住めなくなると、二重生活の経済的負担が発生する
  • 保険だけでは補填しきれないケースも多く、自己防衛が重要

例: 2018年の大阪北部地震では、同じ地域でも耐震性の高い住宅と低い住宅で資産価値の変動に差が生じました。耐震性の高い住宅は資産価値を維持できた一方、損傷の大きかった住宅は市場価値が10〜20%程度下落したケースもあります。

建築士が見る!住宅選びで外せない防災ポイント7選

以下の表で、住宅選びの際に確認すべき主要な防災ポイントをまとめました。これらは私が建築士として特に重視している項目です。

ポイント内容具体例チェック方法
1. ハザードマップ浸水・土砂災害・地震リスク浸水想定区域、土砂災害警戒区域など国土交通省ハザードマップポータルサイト
2. 地盤の強さ地盤の安定性、液状化リスク地盤調査結果、地盤改良の有無不動産会社・自治体への問い合わせ
3. 避難経路避難所アクセス、道路状況最寄り避難所までの距離、道路幅員実地調査、ハザードマップ
4. 構造種別木造/RC造/鉄骨造の違い耐震性、コスト、メンテナンス性建築確認申請書、住宅性能評価書
5. 屋根・外壁強風・豪雨への耐性台風に強い屋根材、雨水対策物件資料、現地確認
6. 窓・ガラス防災・防犯性能複層ガラス、シャッターの有無設備表、現地確認
7. 耐震基準築年数と適用基準新耐震/旧耐震、耐震等級重要事項説明書、建築確認済証

1. ハザードマップ確認はマスト!

  • 国土交通省や自治体が公開しているハザードマップを必ず確認しましょう
  • 浸水想定区域、土砂災害警戒区域、液状化危険度マップなどをチェック
  • 過去の災害履歴も可能な限り調査(地元の方や不動産会社に聞くのも有効)
  • 「この地域は100年に一度の洪水でも3m浸水する」など具体的な数値を把握

実例: 2019年の台風19号では、ハザードマップで浸水想定区域外だった地域でも被害が発生しました。一方、浸水想定に基づいて高台に建てられた住宅は被害を免れました。ハザードマップは完璧ではありませんが、重要な判断材料になります。

2. 地盤の強さを確認しよう

  • 地盤調査報告書の有無と内容を確認(特に新築の場合は必須)
  • 「地盤改良済み」の表記があっても、どのような工法で行われたかを確認
  • 近隣に傾いた家や地盤沈下の跡がないかチェック
  • 造成地の場合は、盛土・切土の状況や造成年数も要チェック

実例: 2011年の東日本大震災では、同じ地域でも地盤の良い場所に建つ住宅と液状化現象が起きた地域の住宅では被害状況に大きな差がありました。適切な地盤調査と必要に応じた地盤改良が施された住宅は、倒壊や傾斜などの深刻な被害を免れたケースが多く報告されています。

3. 避難経路・近隣インフラの確認

  • 最寄りの避難所までの距離と経路を確認(夜間や悪天候でも辿り着けるか)
  • 道路の幅員(緊急車両が通れるか、倒壊した建物で塞がれないか)
  • 高台へのアクセスや複数の避難経路の有無
  • 病院や公共施設などのライフラインへのアクセス性

実例: 2018年の西日本豪雨では、避難所までの経路が冠水して避難できなくなったケースがありました。事前に複数の避難経路を確認していた家族は、安全に避難できたという事例があります。

4. 構造種別による耐震性能の違い

  • 木造:比較的コストは低いが、定期的なメンテナンスが必要
  • RC造(鉄筋コンクリート):耐震・耐火性に優れるが、初期コストは高め
  • 鉄骨造:強度と施工性のバランスに優れる
  • 混構造(1階RC・2階木造など):それぞれのメリットを活かした選択肢も
  • 構造によって地震保険料も異なることを認識しておく

実例: 2016年の熊本地震では、耐震等級3の住宅は倒壊を免れたケースが多く報告されています。特に、同じ地域で建てられた耐震等級1と等級3の木造住宅では、被害状況に明らかな差があり、等級3の住宅は軽微な損傷にとどまったという事例があります。

5. 屋根・外壁の素材と形状

  • 台風に強い屋根材(ガルバリウム鋼板、コンクリート瓦など)を選ぶ
  • 複雑な形状より、シンプルな形状の方が風の影響を受けにくい
  • 外壁の耐候性・耐震性(サイディング、ALC、タイルなど素材による違い)
  • 雨どいや軒の出などの雨水対策が適切か確認

実例: 2018年の台風21号では、同じ地域でも屋根材の違いによって被害状況に差がありました。粘土瓦が多く飛散する中、ガルバリウム鋼板や金属瓦の住宅は被害が少なかったケースが報告されています。

6. 窓・ガラスの防災性能

  • 台風地域では飛来物対策として、シャッターや雨戸の設置を検討
  • 複層ガラスや強化ガラスなど、耐風圧・防犯性に優れた窓の採用
  • 窓の大きさと配置(過度に大きな開口部は災害時にリスクになる場合も)
  • 開閉方式(引き違い窓より開き窓の方が気密性が高い場合が多い)

実例: 2019年の台風15号では、飛来物からガラスを守るシャッターが設置されていた住宅は、窓の破損を免れたケースが多くありました。窓が破損すると室内への雨水侵入で二次被害が拡大するため、窓の防災対策は重要です。

7. 築年数と耐震基準の確認

  • 1981年の新耐震基準、2000年の性能規定への移行を境に耐震性が向上
  • 旧耐震(1981年以前)の物件は、耐震診断・耐震補強の有無を必ず確認
  • 耐震等級2以上なら地震保険料の割引も適用(最大で50%)
  • 制震・免震構造の採用有無も重要なチェックポイント

実例: 1995年の阪神・淡路大震災では、旧耐震基準(1981年以前)の建物に被害が集中しました。一方、新耐震基準で建てられた建物の多くは倒壊を免れています。2011年の東日本大震災でも同様の傾向が見られました。

✅ 地震に強い家づくりに欠かせない「耐震等級」の基本はこちら

耐震等級とは?建築士が教える”地震に強い家”の見分け方|安心と資産を守る選び方

✅ “構造の選び方”で、家の安全性・資産性は大きく変わります

木造・鉄骨・RC造、どれがいい?構造別メリットデメリット

防災性能の高さは「資産価値」にもつながる理由

自然災害が起きたとき、差がつくのは”立地と構造”

  • 同じ災害でも、被害の程度は立地条件と建物の性能で大きく変わる
  • 耐震性の高い家は、地震後も住み続けられる可能性が高く、修繕費用も抑えられる
  • 浸水対策がされている家は、水害後の復旧コストと時間を大幅に削減できる
  • 災害に強い家は、将来の売却時にも評価されやすい

事例: 2016年熊本地震で被災した住宅の調査によると、耐震等級3の住宅は等級1の住宅と比較して、修繕費用が平均で約70%少なく済んだというデータがあります。長期的に見れば、初期投資の差額以上のコスト削減効果があったケースが多く報告されています。

ローン返済中に被災=「家はあるのに住めないリスク」

  • 住宅ローンは被災しても返済義務が続く(自然災害特約がある場合を除く)
  • 仮住まい費用と二重返済の負担は家計を圧迫する
  • 防災視点の事前チェックが、将来の経済的リスクを軽減する
  • 火災保険・地震保険だけでは補填できないケースも多いことを認識しておく

防災性能と保険料の関係

項目影響する保険割引率の目安必要書類
耐震等級3地震保険最大50%住宅性能評価書、耐震等級証明書
免震構造地震保険最大50%住宅性能評価書、免震建築物証明書
耐震診断割引地震保険10%耐震診断結果報告書
建築年割引地震保険10%建築確認書類(1981年6月以降)
非木造構造火災保険料率区分で有利に重要事項説明書

例: 木造住宅で地震保険料が年間5万円の場合、耐震等級3の割引(50%)を適用すると年間2.5万円になります。10年間で25万円の節約となり、耐震性向上のための追加コストの一部を回収できる可能性があります。

Q&A:よくある疑問に建築士が回答!

Q:ハザードマップに少しかかっているけど、買っても大丈夫?

A:一概に「危険だからやめるべき」とは言えません。重要なのは「そのリスクを許容できるかどうか」の判断です。浸水想定区域なら嵩上げ工事や止水板の設置、土砂災害警戒区域なら擁壁の状態確認など、対策が可能な場合もあります。また、適切な保険加入や避難計画の作成も検討しましょう。リスクとコストのバランスを見極めることが大切です。

Q:防災性が高い=価格も高い?

A:必ずしもそうではありません。例えば、ハザードマップ上安全な地域の中古住宅を選び、部分的に耐震補強するなど工夫次第でコストを抑えることも可能です。また、長期的に見れば、防災性の高い住宅は修繕費用や保険料の節約につながり、トータルコストでは有利になるケースも多いです。初期費用だけでなく、長期的な視点での判断が重要です。

Q:RC造の家は安全?高すぎる?

A:RC造は耐震性・耐火性に優れていますが、初期コストは木造に比べて20〜30%程度高くなる傾向があります。ただし、耐久性が高く長期的なメンテナンス費用は抑えられる可能性があります。また、地震保険料も木造より安く設定されているため、長期的なコスト比較が重要です。住む地域の特性(台風が多い、地震リスクが高いなど)や予算、将来の住み方なども考慮して判断しましょう。

まとめ

  • 防災視点の家選びは「命」と「資産」を守ることに直結します!
  • ハザードマップ・地盤・構造の3点チェックは必須です
  • 建築士目線で防災性能を見極めることが、将来のコスト・後悔を防ぐ近道になります
  • 家を”買う”だけでなく、”守る”意識も持ちましょう
  • 防災対策は「念のため」ではなく「当たり前」の時代になっています

地域特性に応じた住宅選びのポイント

日本の各地域には特有の災害リスクがあります。以下に地域別の重点チェックポイントをまとめました。

地域主な災害リスク特に重視すべき防災ポイント対策例
太平洋側沿岸部津波、台風、高潮標高、海岸からの距離、建物の高さ高台選び、RC造の検討、津波避難ビル確認
大都市圏地震火災、密集地延焼耐火性能、避難経路準耐火・耐火構造、広幅員道路へのアクセス
河川流域水害、内水氾濫浸水想定深さ、嵩上げ状況ピロティ形式、電気設備配置の工夫
丘陵地・山間部土砂災害、雪害斜面との位置関係、屋根勾配擁壁状況確認、雪下ろし考慮の設計
活断層周辺直下型地震耐震性能、地盤耐震等級3、免震・制震構造の検討

自分が住む(または住もうとする)地域の特性を理解し、そのリスクに応じた対策を重点的に検討することが効果的です。

役立つ情報源

関連記事

✅ 防災を意識した家づくりで、家族も資産も守りましょう

建築士が伝える|災害に強い家づくりの基本とは?防災×資産形成で後悔しない住宅選びを

コメント

タイトルとURLをコピーしました